
阿久津弁護士は裁判の相手方より信頼される、という特異なエピソードが多い。中でもこれはビジネスライクで知られる保険会社が相手の話である。
*実際の事件とは内容を変えて掲載しています。
「ある損保の事件をやっていて、先方が打ち合わせに来てほしいと言う。それも千葉の房総に(笑)」
_(笑)一日消えますね。
「そうですね。ま、半日は。損保会社からの仕事だから、お金の話をすると極めて小額な報酬なわけですよ。多分、九分九厘ほかの弁護士は行かないのではないかと思います。ただ、やはり報酬金額の大小ではなくて、依頼主と直接会って話をすることが自分にとってはとても重要なのです。」
_阿久津弁護士らしいですね。
「ところが、電車を乗り継いで駅に着いてみたところ、打ち合わせの場所がなかなか見つからずに困りました。なにせ駅前にスナック兼喫茶店のような怪しげな店しかないのですよ。」
_ベルベットの椅子がありそうな(笑)
「そうです(笑) さすがにそこで打合せをするのには抵抗がありました。結局、相談者が乗ってきた車の中で打合せをして、私は再び電車に乗って帰りました。」
_なるほど。お疲れ様でした(笑)
「それで、まあ、裁判は無事に終わりましてね。すべて終わった後に相手方の担当者から、次からお願いしますと言われまして。」
_ええ! 損保の相手側からですよね?
「そうです。社交辞令かと思っていましたら、その一週間後に早くも仕事の依頼が来ました。」
_本気で言っていたんだ(笑)。なぜまたそのような話になったのですか?
「後で聞いた話ですが,私が事件の委任を受けてすぐに現地に行って被害現場を見たり、目撃者の話を聞いたりしていたことにその担当者が感動してくれたそうです。今まで弁護士何人もあったけどそういう人がいなかったそうです。」
_現場主義の阿久津弁護士。
「実際、自分は相手側の弁護士だったので、事件が終了したとはいえ会社としては起用することに反対だったらしいのです。」
_ま、当然でしょうね。
「そのために、その担当者が会社中を回って説得してくれたそうです。この先生しかいないと。」
_担当者の熱意が会社を動かしたと。
「それはさすがに感動しましたよ。すべて後で聞いた話ですけどね。」
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